伝熱
伝熱現象
伝導、対流、放射の三つがある。
熱量
単一の材料からなる壁を伝わる熱量は、
- 壁の両面の温度の差、時間、伝熱面積に比例する
- 伝わる壁の厚さに反比例する
熱放射
真空中においても生じる、ある物体から他の物体へ直接伝達される熱移動現象☆☆☆☆
物体から出る放射の強さは、周囲の物質には関係なく、その物体の温度と表面の状態によって決まる。
物体の温度が上昇すると放射エネルギー量は増大する。
熱貫流
壁の一方の空気から、反対側の空気へ熱が伝わること。
- 熱伝導:物質内部での熱の直接的な移動
- 熱伝達:異なる物質間や空間での熱の移動全般
熱損失係数
建築物の断熱性や保湿性を評価するのに用いる。
機密性を高めると、熱損失係数の値は小さくなる☆☆
熱損失(熱貫流量)の計算☆
熱損失とは、熱の流出入量、すなわち熱貫流量のこと。
熱貫流量 = 熱貫流率 × 内外温度差 × 壁体面積
【例題】以下の条件の熱損失の値を求める
- 外壁(窓の除く)の面積:50㎡
- 窓の面積:20㎡
- 屋内空気の温度:20℃
- 外気の温度:0℃
- 外壁(窓を除く)の熱貫流率:1.0W/(㎡・K)
- 窓の熱貫流率:3.0W/(㎡・K)
① 外壁(窓を除く)の熱貫流量を求める
熱貫流率 × 内外温度差 × 壁体面積
= 1.0 ×(20-0)× 50 = 1,000W
② 窓の熱貫流量を求める
= 熱貫流率 × 内外温度差 × 壁体面積
= 3.0 ×(20-0)× 20 = 1,200W
③ 外壁と窓の熱還流量を足す
全体の熱貫流量 = 1,000 + 1,200 = 2,200W
熱伝達
壁体の内部で、一方の表面から他の表面へ熱が移動すること。
熱伝達抵抗
熱の伝わりにくさ。(大きいほど断熱性が高い)☆
一般に熱伝達抵抗は、壁体の外気側は室内側に比べて小さい☆
熱伝導率(W/m・K)
熱の伝わりやすさ。(大きいほど断熱性が低い)
断熱材が水分を含むと熱伝導率が大きくなる。
壁表面の熱伝達率は、壁面に当たる風速が大きいほど大きくなる。
建築材料の熱伝導率☆☆
- 金属 > 普通コンクリート > 木材
- 木材の熱伝導率はグラスウールの3~4倍程度
グラスウールは、かさ比重(見かけの密度)が16kg/㎥より、32kg/㎥の方が熱伝導率は小さい☆
(かさ比重が大きいほど伝熱が小さい)
⇒ 空気が移動しにくいので、伝熱が小さくなる
熱容量
熱容量=比熱×重量
物質の熱容量が大きくなると、熱の吸収による温度上昇と放出による温度降下とが遅くなり、蓄熱という現象が生じる。
容積比熱
物質1㎥の温度を1℃上昇させるのに必要な熱量。
容量比熱が大きい材料は、容積比熱が小さい材料に比べて、温めるのにより多くの熱量を必要とする。
断熱
室内へ侵入する熱を低減する(断熱性を高める)方法
- 外壁材の屋外表面に白ペイントを塗る
- 断熱層の中空層側にアルミ箔を貼る
- 外壁材の屋外側を緑化する
- 断熱層の厚さを増す
- 断熱層を熱伝導比抵抗の大きな材料にする
- 屋外表面に白ペイントを塗る ×外壁材の中空層側に白ペイントを塗る
冬期において、繊維系の断熱材(グラスウール等)を用いた外壁の断熱層内に通気が生じると、外壁の断熱性が低下する恐れがある☆
断熱性を高めると、
- 暖房、冷房の負担が減少する。
- 窓からの日射による室温の上昇が大きくなる☆
- 冬期における室内の上下温度差が小さくなる。
- 暖房停止後の室温の低下が緩やかになる。
中空層(空気層)
密閉度が高いほど熱抵抗は大きくなる。
厚さ2~3cmまでは熱抵抗は増加、それ以上は減少する。
壁体内の中空層にアルミ箔を貼ると壁体の熱貫流率は減少する(断熱性が高まる)☆
低放射ガラス
低放射ガラスを用いた複層ガラスの熱貫流率は、普通ガラスを用いた複層ガラスに比べて小さい。
コールドドラフト
窓付近に生じる、室内空気が窓ガラス面で冷やされることによって重くなり、床面に向けて硬化する現象。
外断熱工法と内断熱工法☆☆
暖房停止後の温室の低下は、内断熱工法より外断熱工法の方が小さい。
外断熱工法
断熱材を躯体の外側に張り付ける工法。
ヒートブリッジ(熱橋)ができにくく、結露防止に有効。
内断熱工法
直接外気温の影響を受けやすいため、室温の変動が大きく、 ヒートブリッジ(熱橋)ができやすい。
内断熱とする場合、断熱材を厚くしても、外壁の内部結露は軽減できない☆
結露の防止
外壁の内部結露を防止するための壁材☆☆☆☆
- 室内側に防湿層
- 屋外側に通気層
外壁の室内側に生じる表面結露の防止には、断熱強化により、外壁の室内側壁面温度を上昇させることが有効。
外壁の室内側に生じる表面結露は、
防湿層を設けても防ぐことはできない☆
外壁内の断熱材を厚くしても防ぐことはできない☆
⇒断熱層の室内側(高湿側)に防湿層を設ける
結露防止に効果的
- 室内の表面温度を上昇させる☆
- 窓下に放熱器を設置する☆☆☆
- 外断熱工法☆
- 断熱性の高いガラスにする
- 換気を行う
- 雨戸を閉める
- 断熱材を、熱伝導率の小さいものに変更する
- 室内側の壁付近に、気流を妨げるものを置かない
結露が生じやすい
- 外気に面した窓にカーテンを吊るす☆☆
- 暖房室と非暖房室とがある場合の、非暖房室☆☆
- 水蒸気が発生するストーブ☆
- 夏期の地下室においては、換気をすることで結露が増加する場合がある。
二重窓☆☆☆☆☆☆☆
サッシを2組用いて断熱効果を高めた窓。
二重窓における外側窓の室内側の結露を防止するためには、「外側のサッシの気密性を高くする」より「内側サッシの気密性を高くする」ほうが効果的。
換気
計画換気を行うには、住宅の気密性を高めることが必要である☆
湿度
絶対湿度が同じであれば、空気を冷却しても、その空気の水蒸気圧は変化しない。
日射
白色ペイント塗りの日射吸収率☆☆☆☆☆
長波のほうが吸収率が高く、反射率は低い!
「赤外線などの長波長域」>「可視光線などの短波長域」
長波長域は吸収率が高い(反射率が低い)
短波長域は吸収率が低い(反射率が高い)
※黒は吸収率が高く、反射率は低い
透明板ガラスの分光透過率☆
長波は透過しない!
「赤外線などの長波長域」<「可視光線などの短波長域」
長波長域は、ほとんど透過しない。
短波長域は、ほとんど通過する。
まとめ
壁の中って見えないけど、色んな工夫がされているんだね。
- 熱伝導率と熱伝導抵抗は逆の関係
- 内断熱工法より外断熱工法の方が何かと優秀。
- 伝熱はアルミ箔、白色ペイント塗りの日射吸収率と透明板ガラスの分光透過率はよく出る
- 結露は壁断面、二重窓についてよく出る
- 毎年、伝熱と結露で2問くらい出題される