許容応力度等計算
許容応力度等計算は、一次設計と二次設計とを合わせた総称。
耐震設計目標
一次設計
まれに発生する地震(中程度の地震)に対して、建築物が損傷しない(性能の低下が生じない)ようにすること☆☆☆☆
「許容応力度計算」や「屋根葺き材」の計算。
二次設計
極めてまれに発生する地震(最大級の地震)に対して、崩壊・倒壊しないようにすること☆☆☆
「層間変形角」「剛性率」「偏心率」「保有水平耐力」の計算。
許容応力度
建築物に作用する荷重及び外力として、固定荷重、積載荷重、積雪荷重、風圧力及び地震力を採用する。
出典:建築基準法における積雪に関する基準について(国土交通省)
- 暴風時における「建築物の転倒」や「柱の引抜き」等を検討する場合においては、建築物の実況に応じて積載荷重を減らした数値によるものとする☆☆☆☆☆☆
- 応力算定においては、地震力と風圧力は同時に作用しないものとして計算する☆☆
-
許容応力度等計算において、積雪時の短期に生ずる力を計算するに当たり、一般に、多雪区域外(一般の場合)においても積雪荷重によって生ずる力を加える☆
×多雪区域以外では積雪荷重によって生じる力を無視してよい。
長期荷重
建築物及び建築物の構造物が長期間にわたって受ける重量、応力、変形その他の影響の合計。
長期荷重には、固定荷重と積載荷重の両方が含まれる。
短期荷重
短期的に作用することが想定される荷重。地震、台風、大雪による荷重など。
一般(多雪区域に指定された区域外)の場合
- 「地震時の短期に生ずる力」は、「常時の長期に生ずる力」に「地震力によって生ずる力」を加えたものである☆☆☆
短期:地震時=長期:常時(G+P)+地震力(K)
多雪区域の場合
- 長期に生ずる力の計算に用いる積雪荷重 ⇒ 短期の0.7倍☆
- 地震時、暴風時の計算に用いる積雪荷重 ⇒ 短期の0.35倍☆
▶多雪区域を指定する基準☆
- 垂直積雪量が1m以上の区域
- 積雪の初終間日数の平年値が30日以上の区域
固定荷重
骨組部材・仕上材料等のような「構造物自体の重量」と「構造物上に常時固定されている物体の重量」による荷重。
屋根の固定荷重
▶瓦葺き屋根
ふき土がある場合:980N/㎡
ふき土がない場合:640N/㎡
▶厚形スレート葺き屋根
:440N/㎡
⇒瓦ぶき屋根の固定荷重は、厚形スレート葺き屋根の固定荷重よりも大きい。
ふき土:瓦を葺く際に、野地になじませるために使われている土。
積載荷重
積載荷重は、「室の種類(教室、百貨店など)」と「構造計算の対象」に応じて、異なった数値を用いる。
- 事務室において、柱の垂直荷重による圧縮力を計算する場合、その柱が支える床の数に応じて積載荷重を低減することができる☆☆☆☆☆☆
- 倉庫業を営む倉庫の床の積載荷重ついては、実況に応じて計算した値が3,900N/㎡未満の場合であっても3,900N/㎡として計算する☆☆☆
- 積載荷重が一様に分布している場合の応力より、そこから一部の荷重を減らして荷重が偏在している場合の応力のほうが不利になることがある。
床の単位面積当たりの積載荷重☆☆☆☆
百貨店、店舗の売り場 > 教室 > 住宅の居室
同一の室に用いる積載荷重の大小関係☆☆☆☆☆☆☆☆
床 > 大梁・柱・基礎 > 地震力
「床の構造計算をする場合の積載荷重」と「大梁の構造計算をする場合の積載荷重」は、同一の室においても異なった値を用いて計算する。
⇒ 「柱の構造計算をする場合」より「床の構造計算をする場合」のほうが大きい
⇒「床の構造計算をする場合」より「地震力を計算する場合」のほうが小さい
積雪荷重
- 屋根面における積雪量が不均等となる恐れのある場合は、その影響を考慮して積雪荷重の計算をする☆☆☆☆☆☆
- 屋根の積雪荷重は、雪止めのない屋根の場合、屋根勾配が緩やかになるほど大きくなる。
⇒ 勾配が60℃を超えると、零にすることができる☆☆☆☆☆
積雪の単位荷重
▶多雪区域外
積雪量1㎝ごとに20N/㎡以上とする☆
▶多雪区域
特定行政庁が異なる定めをする。
風圧力
風圧力(w)
w=q×Cf
・q:速度圧(高さに関係する)
・Cf:風圧係数(高さに関係しない)
風圧力は、速度圧に風圧係数を乗じて計算する。
- 建築物の屋根版(屋根の構造体)に作用する風圧力と、屋根葺き材(外装材)に作用する風圧力とは、それぞれ個別に計算する☆
速度圧(q)
q=0.6×E×Vo²
・E:速度圧の高さ方向の分布を示す係数
・Vo:その地方において定められた風速
速度圧は、「その地方において定められた風速」の2乗に比例する☆☆☆☆☆☆☆
×風速の平方根に比例する
- 速度圧は、屋根の平均高さに基づいて算定する。
風力係数(cf)
Cf=Cpe-Cpi
・Cpe:外圧係数
・Cpi:内圧係数
閉鎖型及び開放型の建築物の風力係数は、建築物の外圧係数から内圧係数を減じた数値とする☆☆
風力係数は、風洞試験によって求めるほか、建築物の断面及び平面の形状に応じて国土交通大臣が定める。
⇒ 高さには関係していない。
×風圧力の計算に用いる風力係数は、地盤面からの高さが高い部位ほど大きい。
- 開放型の建築物で風上開放の場合、風圧力の計算に用いる風力係数は、正の内圧係数を用いて計算する。
⇒ 風下の場合、負の内圧係数を用いる
▶外圧係数
建物などの外表面に受ける風による荷重を係数で表したもの。
速度圧の高さ方向の分布を示す係数(E)
E=Er^2×Gf
・Er:平均速度の高さ方向の分布を表す係数
・Gf:ガスト影響係数
平均速度の高さ方向の分布を表す係数(Er)
「地表面粗度区分(I~IV)」と「建物の屋根の平均高さ」より算出する☆
Erは、同じ地表高さの場合、地表面粗度区分がIIIよりIIのほうが大きくなる。
▶地表面粗度区分
地表面の滑らかな状態から粗い状態までを段階的に区分(I>II>III>IV)したもの。
都市計画区域の指定の有無、海岸線からの距離、建築物の高さなどを考慮して定められている。
地表面に建築物や樹木等の障害物が多いほど、風速は低くなるため、風車などの建築物に作用する風圧力も小さくなる。
※地震力とは関係がない
▶風圧作用面積
風を受ける建物の面積。
金網、ラチス(ジグザグ状の補強材)その他の網状の構造物の風圧作用面積は、風の作用する方向から見た金網等の見付面積とする☆
地震力
地上部分の地震力(地震層せん断力Qi)
Qi=Wi×Ci
・Wi:i階より上部の重量(固定荷重+積載荷重)
・Ci:地震層せん断力係数
地震層せん断力係数Ci=0.2
屋根部分の固定荷重と積載荷重の和=WR
2階部分の固定荷重と積載荷重の和=W2 の場合
⇒ Qi=0.2×(WR)+W2
建築物の地上部分の地震力は、多雪区域に指定された区域外では、建築物の各部分の高さに応じて、「当該高さの部分が支える固定荷重と積載荷重との和(Wi)」に、当該高さにおける地震せん断力係数Ciを乗じて計算する☆☆
地震層せん断力係数Ci
Ci=Z×Rt×Ai×Co
・Z:地震地域係数
・Rt:振動特性係数
・Ai:高さ方向の地震層せん断力係数の分布係数
・Co:標準せん断力係数
Ciは、建築物の地上部分の一定の高さにおける係数。
- Ciは、上階になるほど大きくなる☆☆☆☆☆
地震地域係数Z
Zは、過去の震害の程度及び地震活動の状況、予想される地震動の強さに基づいて、各地域ごとに1.0から0.7までの範囲内において定められている☆☆☆☆☆☆
振動特性係数Rt
Rtは、建築物の設計用一次固有周期及び地盤の種類に応じて算出する。
Rtは、設計用一次固有周期Tが長いほど小さくなる☆☆☆☆☆☆
▶地盤の種類
・第一種地盤:岩盤、硬質砂れき層等
・第二種地盤:その他
・第三種地盤:腐食土、泥土等で構成される沖積層
Rtは、設計用一次固有周期Tが長い場合、「第三種地盤(軟弱)>第二種地盤>第一種地盤(硬質)」となる(第三種地盤が大きい)
高さ方向の地震層せん断力係数の分布係数(Ai)
- Aiは、1階を1.0とし、上層部分になるほど数値は大きくなる☆
⇒ 建築物の最上階が最も大きくなる - Aiは、設計用一次固有周期Tが長いほど大きくなる。
標準せん断力係数Co
・許容応力度計算(一次設計)を計算する場合
⇒ 0.2以上とする☆
⇒「地盤が著しく軟弱な地域」の木造の建築物は0.3以上とする☆☆☆☆☆☆☆
・必要保有水平耐力(二次設計)を計算する場合
⇒ 1.0以上とする☆☆☆☆
設計用一次固有周期T(秒)
T=h(0.02+0.01α)
・h:建築物の高さ(m)
・α:柱及び梁の大部分が木造又は鉄骨造である階の合計高さのhに対する比
固有周期が長いほど、ゆっくり揺れる ⇔ 短いと小刻みに揺れる
・RC(鉄筋コンクリート造)、SRC(鉄骨鉄筋コンクリート造):α=0
⇒ 建築物の高さに0.02を乗じて算出する(T=0.02h)
・S造(鋼構造):α=1
⇒ 建築物の高さに0.03を乗じて算出する(T=0.03h)
⇒ 固有周期は同じ高さ・形状の建築物の場合「RC造」より「S造」のほうが長くなる。
地下部分の地震力
地下部分の地震力=Wi×k
・Wi:(固定荷重+積載荷重)
・k:水平深度
地下部分の地震力は、「固定荷重と積載荷重との和(Wi)」に水平深度kを乗じて計算する☆☆☆☆☆
kは地盤面から深さ20mまでは深さが深くなるほど小さくなる。
(20mを超えるときは20mとする)
⇒ 建築物の地下部分の各部分に作用する地震力は、地盤面から深くなるほど小さくなる。
他の分野
地盤
沖積粘性土(ちゅうせきねんせいど)の下層面が地盤面下15m以深である地域については、杭の「負の摩擦力」の検討を行う必要がある。
地下外壁
土圧
主働土圧
構造体(壁)が土から離れる側に移動した場合の圧力。
擁壁に作用する土圧のうち、主働土圧は、擁壁が地盤から離れる方向に変位するときに、最終的に一定値に落ち着いた状態で発揮される土圧である。
受動土圧
構造体(壁)が土に向かって移動した場合の圧力。
静止土圧
壁体及びこれに接する土が静止状態にあるときの土圧。
ラーメン構造
まとめ
いよいよ建築構造の分野に突入しました。
まずはよく出るところを着実に押さえておこう。
他のところも勉強しだすと相乗効果で理解が深まる気がします。。。
- 暴風時における「建築物の転倒」や「柱の引抜き」等を検討する場合においては、建築物の実況に応じて積載荷重を減らした数値によるものとする☆☆☆☆☆☆
-
事務室において、柱の垂直荷重による圧縮力を計算する場合、その柱が支える床の数に応じて積載荷重を低減することができる☆☆☆☆☆☆
-
床の単位面積当たりの積載荷重☆☆☆☆
百貨店、店舗の売り場 > 教室 > 住宅の居室 -
同一の室に用いる積載荷重の大小関係☆☆☆☆☆☆☆☆
床 > 大梁・柱・基礎 > 地震力 -
風圧力を計算する場合の速度圧は、「その地方において定められた風速」の2乗に比例する☆☆☆☆☆